梅雨真っ只中のこの時期を通り過ぎると、いよいよ本格的な夏の暑さ到来ですね。
日本の蒸し暑い夏を乗り切るために、欠かせないアイテムと言えば何と言っても「冷房」ではないでしょうか。
不快な夏の暑さから解放されるのはありがたい限りですが、電車内や仕事場など冷房が効きすぎている場面って意外と多くありませんか?
女性だけではなく男性にも多い「夏の冷え症」……だいぶ前から注目されていますよね。
その一因となっているのが冷房の人工的な強すぎる冷気です。
今回は冷え症をテーマに、年間を通して悩まされる冷えの原因や対処法について掘り下げてみましょう。
冷え症と低体温の違い
‟冷え症”は、厚い靴下が欠かせない、手がかじかんでしまうなどの外気温にかかわらず末端の冷えを感じる症状のことを指します。
体温は平熱の範囲内である場合が多く、あくまでも手足などの末端が気温に関係なく異常な冷えを感じる症状です。
手足の冷たさには原因が複数あり、特に手足の血管が収縮して血流が悪くなることが大きな要因となっています。
‟低体温”は体の奥深くの温度(内臓の温度)が37度近くあるところが35度以下の状態で、脇の下や耳などの体の表面で測定した温度は35度台を目安に低体温と呼んでいます。
体の中心部の温度が35度以下の症状が低体温と覚えておくと良いでしょうね。
冷え症の原因
冷えはあらゆる病気の発症源になるという意味で「冷えは万病のもと」と言われてきましたが、冷える理由は大きく分けると3つあります。
何かしらの病気を患う前に冷え症の正体を突き止めましょう。
① 熱を生み出す力が弱い
皆さんは基礎代謝という言葉を聞いたことがありますか?
基礎代謝は人の体内で熱の生産に最も大きく関わっているんですよ。
基礎代謝とは
基礎代謝の消費エネルギは、1日のエネルギー消費の60~70%ととても高いのです。
体の部位別に基礎代謝として消費エネルギーが多い順に分けると次のようになります。
部位 | 割合 |
筋肉 | 約38% |
肝臓 | 約12% |
胃腸と腎臓 | 約8% |
脾臓 | 約6% |
心臓 | 約4% |
その他 | 約24% |
この結果から筋肉が突出して熱の生産力が高いことが分かりますよね。筋肉量が少ないと生み出せる熱は少なくなり、寒さを感じる環境下では冷えを感じやすいのです。
女性に冷え症が多いのも筋肉量の差が原因です。
体重に対する筋肉量は、男性が約40%なのに対して女性は約36%ですから、女性が無理なダイエットでさらに筋肉量を落とすことにより、慢性的な冷えに結びついてしまう可能性があるのが分かりますよね。
② 作られた熱が全身に行き届かない
自律神経には交感神経と副交感神経の2種類ありますが、この2つの神経のバランスが乱れると血流が滞り全身に熱が行き届かなくなります。
通常、自律神経の乱れは交感神経の働きが優位になることで起こります。
交感神経は日中の活発な動作の源になる神経ですが、この神経が働きすぎると体が興奮・緊張し、血液の通り道である血管は硬く細くなります。
血管の収縮は血流を滞らせることになり、手足などの末端に十分な量の血液が流れ込まずに強い冷えを感じるようになります。
不安やストレスも交感神経の活性化につながるため、ストレスを溜め込まない生活を意識することも大切ですね。
その他には、食べ過ぎも冷えの原因をつくるんですよ。
食べ過ぎが冷えの原因となるのは、食べたものを消化するために血液が胃腸に集まってしまい、筋肉や他の器官など熱の生産力が高い部位への血液の供給が減ってしまうためです。
このように、自律神経のバランスが乱れたり、食べ過ぎたりすることによる相乗効果によって熱が全身に伝わらなくなるのです。
③ 作った熱が体内から逃げてしまう
人の体の約6~7割が水でできていることは有名ですよね。
1日に必要な水分量は体重によって変わり、約60㎏の人の場合は2.6リットルの水分が必要ですが、この量は食事からの水分摂取量も含みます。
ただ、この量は汗や排尿などで体内の水分を十分に排出している場合です。
体が冷えているため汗をかかない状態が続くと、体内に不要な水分が溜まっていくので水分の摂りすぎは体の冷えを招いてしまいます。
意外に思われるかもしれませんが、皮下脂肪の量が多いことも冷えの一因になるんですよ。
脂肪には熱を遮断する効果がありますが、筋肉と違い血管がほとんど通っていないため、熱が脂肪に伝わったとしてもその熱が全身に伝わりにくいのです。
その他に考えられる原因
その他に体の冷えに結びつく原因はどんなものがあるのでしょうか?
3つに絞ってお伝えします。
栄養バランスの偏りによるエネルギー不足
栄養が偏った食生活を続けていると、体を構成しているたんぱく質や脂質・炭水化物が不足しがちになり、栄養を熱に変えるビタミンやミネラルなども足りなくなります。
無理なダイエットや食事制限により、熱を発生させるビタミンやミネラルが不足することで冷えに悩まされることになるんですね。
体を強く締め付ける衣類による血行不良
体を強く締め付ける下着類や、タイトで柔軟性の乏しいジーンズ、シートベルトやコルセットなどで長時間体が圧迫されると血行不良が生じます。
露出の多いファッション…例えば、素足にサンダル、ハーフパンツにタンクトップなどの体の表面が外気にさらされるファッションだと、冷房の強い寒気などで体の内側から冷やされることになり、体の冷えを招く可能性があります。
女性ホルモンが乱れることで生じる血流の悪化
女性限定の冷え症の原因ですね。
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンという2種類のホルモンがありますが、エストロゲンの分泌が低下すると冷え症につながります。
女性ホルモンは女性の心と体のバランスを取っている物質で、手足などの体の末端にある毛細血管を広げて血流を強くすることで、手足を温める効果があります。
ストレスや更年期障害などで女性ホルモンの分泌が抑制されると、血流が悪くなり卵巣の機能が低下します。
その結果、冷えをはじめとした生理痛や生理不順などの体の不調が起きやすくなるのです。
冷え症が身体にもたらす悪影響
冷えによる悪影響が分かると、体の冷えを簡単に考えてはいけないことが理解できるのではないでしょうか?
冷えによる症状は頭の先から足の先まで全身に及びます。
不眠
人の体温は1日を通して変化があり、良質な睡眠とも深い関係があることが分かっています。
通常は日中の活動する時間帯は体温が上昇し、夜になると体に蓄積した熱を下げるために手や足の末端の血管を広げて、溜まった熱を排出します。
その体温の変化するタイミングが入眠のサインとなり、体は自然と眠りの体制に入るので、このタイミングで寝ることが質の良い睡眠を得ることにつながります。
ところが、体が日中も冷えていると夜になっても体温を下げないように体の防御機能が働くため、体温の変化に乏しく入眠のタイミングがやってこないのです。
体の冷えは入眠後にも中途覚醒や浅い眠りが多くなるので、睡眠障害に発展する可能性もあります。
免疫力の低下
私たちの体は36.5~37度くらいの体温のときが、最も体の機能が正常に作用するようになっています。この体温よりも低下すると、体の冷えによる不調や病気を起こしやすくなります。
体温が35.5度以下の状態が長引くと、排泄機能の低下、アレルギー症状や自律神経失調症などが出やすいとされます。
35度はがん細胞がもっとも増えやすい体温でがんの発症確立が高まりますし、34度まで体温が下がると低体温症で命に危険が及ぶレベルとなるため、適正な体温から1~2度低下するだけで体の不調や生命が危ぶまれる状態になるのが分かりますね。
さらには、体温が1度低下すると免疫力が30%以上減少し、代謝が約12%低下すると言われています。免疫力が低下することで病気にかかりやすくなりますし、代謝の低下は血液中の老廃物が燃焼しきれず血液がドロドロの状態になり動脈硬化が進む可能性もあります。
代謝の低下は体温の維持に欠かせないエネルギーの産生を阻害することにもなるので、冷えがさらに進むことも考えられます。
体が「こる」原因となる
体の冷えは「こり」を引き起こす大きな原因です。
血管のなかを流れている血液は、体の隅々まで必要な酸素や栄養素を運ぶ役割とともに、体内に溜まった老廃物を取り除く役割も持っています。血流が滞ることで老廃物がスムーズに排出できなくなり、こりや痛みの原因となります。
冷えが全身に広がると筋肉が硬くなり血管を圧迫してしまうため、血液の流れが阻害されることになり、体内の老廃物が適切に排出されなくなるのです。
そして、体のさまざまな部位にこりや痛みが生じやすくなります。
露出の多いファッションは控えるようにして、体を冷やさないようにしましょうね。
その他の悪影響
冷えは全身の不調を招き、そのまま放置するとますます悪化していきます。
冷え症にかかると手足が冷たくなる症状に見舞われますが、この段階は冷えの初期と言えます。この状態から腰やお腹にも冷えが進行しているようなら、冷えが着実に悪化していると言えるでしょう。
冷えを放っておくと、慢性的な疲れや肩こり・消化器系の不調・体の痛みや動きにくさとなって自覚できるようになります。
正常な範囲に収まらない冷えを感じた場合は、初期段階のうちで治療するようにしましょう。
ここで、自分の体が冷えているのか、確認する方法をお伝えしますね。
起床後すぐに脇の下に手を入れた後、お腹を触ってみてください。お腹が脇の下よりも冷たければ体が冷えている証拠です。
冷え症の克服法
冷え症をいつまでも引きずっていたくないですよね。
ここでは隠れ冷え症も含め、慢性的な苦しみを生む冷え症の克服法を見ていきます。
バランスの良い食生活
私たちの体は適正体温を維持しようとする働きがあります。
37度より低い温度の食品を摂取した場合は熱の放出を少なくし体温を上げ、37度より高い温度の食品を摂取した場合は、皮膚の表面近くにある血管を広げて熱を逃します。
このように体温の変化を元に戻す仕組みが体には備わっているのです。
これは本来、人に備わっている体温を一定に保つ仕組みですが、この仕組みを適正に働かせるためにはバランスの取れた食生活に整えることが重要です。
体温の変動を少なくするためには体を冷やす食品の摂取を控え、体を温める食品を積極的に摂るのが良いという考えが思いつきますが、実際は冷えの解消は簡単ではなく、体を温める食品の摂取が冷え症の改善に確実に効果的とまでは言い切れないのです。
大切なことは特定の食品に拘ることではなく、バランスの良い食事を意識することです。
偏りのない食生活を続けることで冷え症の解消につながっていくので、満遍なくいろいろな食材を食べるようにしましょうね。
十分な量のタンパク質を摂る
飲食物の摂取でエネルギーの約8割が熱に変換されますが、食事量が少なすぎる場合・胃や腸が弱っていて栄養の吸収が悪い場合は、熱を生み出す割合が少なくなりがちで体温の低下に陥りやすくなります。
そのため、冷え症を治療する上では、胃腸を整えることが大切になってきます。
栄養素により熱に変換される割合は異なりますが、脂肪や炭水化物・タンパク質の3つなかで、熱の生産力が一番高いのが‟タンパク質”です。
タンパク質と炭水化物の熱を生み出す仕組みは異なり、炭水化物は体を動かすことで熱を作りますが、タンパク質は体の動作とは関係なく熱が作りだされます。
このため、体をあまり動かす習慣のない人にとってはタンパク質の摂取は熱の生産にとても有効です。
また、一般的な女性は男性に比べると身体的な活動量が少なく、熱の生産力が最も多い筋肉量も少ないため、タンパク質を積極的に摂るようにすると良いでしょうね。
寒暖差を調整しやすい衣服を選ぶ
ストッキングやスカートなど女性の衣服は保温性が高くないものが多くあります。
指先や足先など体の末端部に冷えを感じるときに靴下を重ね着したり、ルームシューズを履いたりしても、交感神経が活性化しているうちは血管が広がることがないため、冷えは改善しにくいでしょう。
下着類を選ぶときは、腕・胸・背中・お腹などの面積の広いものを着用するようにして、体幹部の奥のほうを温めるようにしましょう。
そうすることで、体内からの熱の放出が増えるため、筋肉の緊張がゆるみ血管が広がることで体の隅々まで温かくなります。
この時に注意すべきポイントは、重ね着のしすぎは汗をかきやすくなり気化熱により体温が下がる原因となり、体が圧迫されることで血流の悪化を招くことです。
この場合は、タイトすぎず厚みもさほどない服を重ね着することで対処すると良いでしょう。
皮膚に直接触れる下着については、吸湿性に優れた素材のものを使うようにすると、体が温まりやすくなります。
例えば、吸湿性は良いが乾燥しにくい綿素材のものは汗がいつまでも引かないため、冷え症の対策には向いていません。
日々の習慣に運動を取り入れ筋肉をつける
冷えの原因については上で述べていますが、3つあげたうちの2つを改めてお伝えします。
代表的な冷えの原因
| 筋肉量が少ないために、体内で熱を作りだせない
| 血流の悪化から、熱を体の隅々まで運ぶことができない
基礎代謝は1日の消費エネルギーの60~70%を占めています。このうち筋肉が消費するエネルギーが約40%と熱の生産に大きく貢献しています。
胸・背中・お尻・脚などの大きな筋肉を鍛えることで冷え症の改善につながり、血液を心臓に戻す役割をしているふくらはぎの筋肉も鍛えることで、全身の血のめぐりが改善します。
運動を続けることで体のさまざまな筋肉を鍛えることになり、代謝の向上につながり、自律神経のバランスが整えられることで硬くなった筋肉のこりを解消する効果もあります。
冷えない体づくりのためには、日々の生活に無理のない運動を取り入れることが必要です。
歩幅を広げてウォーキングをする時間を1日30分でも取り入れると、代謝の向上と血流の改善から全身に熱が行き届くようになります。
入浴習慣をつける
入浴は体を温めるのに効果的ですが、半身浴より全身浴が好ましいでしょう。
半身浴は冬の寒い時期には上半身が温まりにくいですし、肩や首のこりの改善にも効果が見込みにくいためです。
一般的には冷え症の改善には湯温40~42度の全身浴がお勧めです。全身浴は体を温めるだけではなく、筋肉のこりをほぐす効果や体の修復効果も期待することができます。
ただし、入浴が長く続くとのぼせることがあるため、湯船に肩まで浸かるのは5分間までとするなど、長時間の入浴は避けるようにしましょう。
入浴中のストレッチも効果的です。
アルコールの飲みすぎに気をつける
アルコールは体を温める効果があると思われがちですが、冷蔵庫から取り出したビールも、燗をした日本酒も冷えの原因をつくります。
理由は、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドが血管を拡張させ、熱が体内から排出されていまうためです。
大量飲酒は体温の低下を招くため、飲み過ぎには気をつけましょうね。
冷え症を克服し病気のなりにくい体を目指しましょう!
最近は男性でも冷え症に悩まされる人が増えてきていますよね。
その背景には日常的に感じるストレスや不安・緊張感などによって、交感神経が活発に働くことが一因としてあげられます。
まずはストレス源を理解したうえでストレス緩和の対策を講じることが大切です。
冷えは万病のもとと言いますが、手足の冷えもまた然りです。
体の冷えを感じる背景には必ず理由が存在し、理由がある以上その改善方法もあります。
これから夏本番の暑さを迎えるにあたり、クーラー病などの夏の冷えがメディアでも取り上げられてくるでしょう。
原因と対処法を今回の記事から少しでも認識してもらい、体の冷えや冷え症の改善に役立てていただければ幸いです。
もみほぐしによる血行の促進効果も冷えの緩和につながります。
自己対処で冷えの改善が見込めない場合は、是非、プロの施術を受けに来てください。